わが詩集

江差追分に寄せて』(昭和54年32才時)
 
   荒磯の岩に砕けし波しぶき 鴎島に春遠からんを想う

 

   名人の唄を聞くたびわが芸の 遅々たる歩みがもどかしい

 

   いつの日かまことの追分もとめつつ 歩いてみたや江差の浜を

 

   波しぶく海に向かいて追分を 声も裂けよと繰り返すわれ

 

 

 

江差追分


♪はるか彼方のあの帆柱はヤンサノエー 蝦夷地がよいかなつかしや
 荒い波風乗り越え行きてネー どうぞご無事でゆかしゃんせ
 
 暗い波間に帆影が浮かぶ あれはあなたの乗る船か


 ついて行く気はやまやまなれどネー せめてなりたやかもめどり (令和2年2月8日)

 

 

♪遠くはるかに 立つ白波をヤンサノエー 越えてはるばる かもめ島 
 ほのかに見ゆる大島小島ネー ぽつんと一つ瓶子岩

 

 新地がよいの主さん憎くや 戻っておくれ浜小屋へ

 

 山の上よりかすかに聞こゆネー 三味の悲しや水調子  (令和2年2月22日)

 

 

 

 

『浜辺にて』(令和2年2月10日)


浜辺を歩み ふと見れば 波打ち際で 戯れる
鷗の群れが 愛らしい 侘しい浜の 昼下がり
沖の漁船の 陽に映えて 静かにじっと 二つ三つ  
寄せては返す 凪波へ 向って唄う 七節に
追分節の 万感を 込めるも空し 声のさび      
遥に霞む 大島と 伊豆の半島 かざし見て
あれが蝦夷地と 想いなす 手前に見ゆる 烏帽子岩
神威岩とも 見えようか

 

 

『江の島にて』(令和2年2月12日)

  
島の裏ての 岩礁の 波が砕ける 荒磯に
はて人か波か わからねど 洞穴穿つ その力
神も仏も 敬うが 恃むまいとて 思いしに
岩屋に住まう 弁天に 祈る心が あさましや
世に変えられぬ ものありて そは宿命と 例えられ 
世に変えられる ものありて そは運命と なぞられる  
音曲の神 弁天は そもそも水の 神ならん
第二岩屋の 龍神に 願いをかけて 御覧じろ

 

 

『愁い』(令和2年2月16日)
  
雨のしとしと 降る夕は 一人窓辺に たたずみて
古稀を過ぎたる 身を嘆き この先いかに 生くべきか
思案にくれて 如月の 庭を眺めて ふと見れば
椿のつぼみ 綻びて 雨の雫を 身にまとい
我にそも何を 囁くや 
好きなショパンの ノクターン 静かに聴くも もの悲し