高い声を美しく出す

 わしは30代の頃は二尺で唄っていました。それが三十年のブランクがあり、定年退職後に再開したせいで、今では二尺四寸です。低音は昔から得意だったが、高音がダメージを受けて出にくくなりました。それでもなんとか工夫しています。
 五節を例にとってみましょう。足は直立しないで若干余裕をもたせて立ちます。やや前かがみに顎を引き、丹田に力を入れ、口を十分に開けて「♪あれ~」と入ります。次いで、「♪が~」のところでは、顔を徐々に上げ、水平線に向かう気持ちで万感の想いを込めて唄い上げます。この時、「♪が~」の母音「あ~」の部分を口を十分に開けて、美しく唄わねばなりません。以前、追分名人の一人に指導を受けた時に、《あなたの五節はどの名人よりも美しい》と言われて、大変うれしく思ったと同時に自信がつきました。
 二節の「♪鳴く音に」の「に」についても五節と同様の事が言えましょう。